
| KAKUTA その先へ―― | ||
| 2年ぶりの新作『甘い丘』と、劇団のこと |
| 劇場で、そして劇場を飛び出た意外な場所で、上質な演劇空間を生み出し続けるKAKUTA。 ‘05年に結成10周年をむかえた彼らの、2年ぶりとなる新作がこの1月、シアタートラムで上演される。 KAKUTA第18回公演 『甘い丘』(⇒ここだけ太字でお願いします) この楽しみな公演を前に、主宰の桑原裕子さんと女優の原扶貴子さんに新作のこと、劇団のことを語ってもらった。 |
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| 2006/11/10 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 | ||||
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KAKUTA 1996年結成。『日常と地続きの別世界』をテーマに、見る者を選ばない親しみやすい演技体、日常を基盤とした舞台空間をベースにしつつも、どこか非日常的な設定・要素を盛り込み、「物語に肌で感じる共感」と「異空間へ足を踏み入れたワクワク感」を併せ持った劇空間を展開する。特異なメソッドやサブカル的要素を排除し、敢えてオーソドックスな演技方法・綿密なプロットによる戯曲形態を用いることで、普遍性・大衆性を意識した作品世界を紡ぎ、『現代人の上質な娯楽』を目指す。 |
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桑原裕子(左) KAKUTA主宰。作・演出を兼ね、役者としても同劇団の本公演全作品に出演するかたわら、阿佐ヶ谷スパイダースや拙者ムニエルなど、人気劇団への出演も多数。近年はジャンルを超えてシナリオライターとしても活躍。 原扶貴子(右) KAKUTAを支える個性派女優。第5回公演よりKAKUTAに参加し、2001年に正式に劇団員になる。劇団作品で癖のある役柄を印象的にこなす一方で、金盾進プロデュース公演や桟敷童子などにも客演。 |
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‘06のKAKUTA / ’07のKAKUTA |
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| ―今作『甘い丘』は2年ぶりの新作になりますね 桑原裕子(以下、桑):そうですね。昨年の『南国プールの熱い砂』以来ですから、2年ぶりですね ―その昨年が、KAKUTA誕生から満10周年。11年目の今年('06)は『ムーンライトコースター』の再演と朗読公演だけだったので、ワンクッション置いた印象ですが? 桑:特にワンクッションというわけではないんです。『ムーンライトコースター』を再演したのは、アレはあんまり歳とるとできないから(笑)。体力的にできるうちにやっておきたかったんですよ。だから、「ちょっと落ち着こうよ」というよりも「今しかできないことをやっておこう」という感覚でしたね ―確かに『ムーンライト〜』はしんどい公演だったでしょうね 原扶貴子(以下、原):本当。特に演目によっては桑原とか、すごく走ってましたし。そもそもあれは準備段階からもう、走り回ってやってたんですよ 桑:走りましたねぇ。実は今年やったときも「…もうちょっとツライな」っていう感じが…(笑) ―そこで年齢的なことを嫌でも自覚して(笑)、今作『甘い丘』へと至るわけですが、新たな10年の新作第一弾となるこの作品に当たって、心機一転という意識はある? 桑:それは確かにありますね。これまでは若い世代に向けた元気な話が多かった。昨年の『南国プール〜』も劇団員だけで、同級生っていう設定でやったんですけど、やっぱり同世代感をとても意識した作品でした。でも、これからは言ってみれば“いいオトナ”にもなってくることだし、もう少し上の世代に対しても向けられるような思考を持っていこうというのはあると思います。と言って、もちろんこれからも元気な、バタバタ走り回るようなものだってやっていくんですけどね。でも、今回は特に、劇場がシアタートラムということもありますから。トラムって、ちょっと上質な印象がありますよね。なので、その辺も意識してやろうと思ってます |
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| 女性として 向き合いたいこと |
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| ―さて、新作『甘い丘』。どんなお話になるのか簡単に教えてください 桑:これは働く女たちの話です。上は50代から、という風にわりと幅広い世代の、働く女たちの話。女が働くのは今では当たり前になってはいますけど、それでも、働かざるを得ない事情があるから働いているという女性もやっぱりいますよね。そういう、働かなければいけない事情を抱えた女たちが、単身住み込みで働く場所――それってちょっと特殊な空間だと思うんですけど――で新しく生活を始めた一人の主婦が、カルチャーショックを受けたりするなかで新しい自分を発見していく、という感じの話です。 …って言っといて、私、半分くらい書いてから一気に全部書き変えちゃったりとかってことが往々にしてあるので、話が大きく変わっちゃったらごめんなさい(笑) ―なんでも、遠くまで取材に行かれたとか 桑:そうですね。やりたいと思っている感じのものが近くに無かったので、大阪まで行ってサンダル工場を見学してきました。そこは特に女性が働いている場所というわけではないし、工場内まで入れてもらえたわけでもないんですけど、とにかく匂いが独特なんですよ。そんな匂いだとかを感じて来たところです ―今作、桑原さんご自身で楽しみにしているところは? 桑:女性的な目線の作品というのはこれまでもあったんですけど、今回のような、ちょっとがさついた女たち、泥臭い女たちの話にはほとんど挑戦したことがなかったので、その部分をしっかりお見せできたらなと思ってます。あとは……少しその、女にとっての性的なもの――性欲であるとか、「枯れてるんじゃないか、私は?」っていうことだとか――にも向き合ってみようかな、と。もう、いい歳なんで(笑) ―そのあたり、演じる原さんは役者としてどう思います? 原:私はKAKUTAで一番年上なので、ずっと、比較的年齢が高い役を劇団の中ではやってきたんですね。だから、女の人のそういうお話っていうのは、「よしっ、来た来たー!」みたいな感じです(笑)。今までは自分よりちょっと下の世代の青春群像劇みたいなものが多かったんですけど、だんだんそういう方向にもスライドしていってると聞くと、すごくありがたい(笑)。そういう、女性のあれこれについては私も身につまされる部分でもありますし、大事にしていきたいですね |
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日常の延長にある ファンタジー |
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| ―ここからはちょっと、劇団のことを聞かせて下さい。KAKUTAのお芝居の特徴とは? 桑: 私たちは2つのキーワードみたいなものをいつも持っているんです。1つは「日常と地続きの別世界」を提供したい、創造したいということ。それは、日常生活をあくまで地盤としながらも「あんまりこういう場所って行かないよな」っていうような場所を舞台設定にしたり、起こりそうだけど起こらないような要素を盛り込んだりすることで、私たちの生活の中のちょっと目線をはずしたところにあるファンタジーに気付いていきたい、ということなんですね。 もう1つは、「現代人にとっての上質な娯楽」を作りたいということ。これはシアタートラムでやっても遊園地でやってもそうなんですけど、私たちは舞台を“芸術”というちょっと力の入った感じじゃなくて、娯楽として、エンターテイメントとして見せられたらいいなと思ってるんです。でも、だからと言って「ワー!」と若さの勢いで見せたり、あるいは小劇場というサブカル的なイメージの範疇でやったりというのではなくて、演劇に普段触れないような社会人でも楽しめる、現代(いま)の人間が作る上質な娯楽としてやりたい、ということなんです。その2つがKAKUTAの特徴ですね ―演じる上で心がけていることは? 原:桑原が持ってくる設定とかって、ちょっと突飛だったりするんですよ。で、私が振り当てられる役がまた、結構そういう役が多い。おじさんの霊に乗り移られた浮浪者とか(笑)。でも、ちょっと日常から外れた枠を与えられることで、かえって日常で大事にしたいものがよく見えてくる――それは演じていても感じるので、たとえ突飛な役であっても、気持ちだとか大事にする部分は普段の、日常の自分の感覚の中から拾ってくるようにしています。特別変わったことをやろうというのではなくて、桑原も言うように日常の感覚の延長で、単純に楽しんでもらえるものを作りたい。そういう気持ちでやっていますね ―新たな10年へと踏み出したKAKUTA。その点での意気込みは? 桑:う〜ん、…逆に言えば、いつでも「これが最後かもしれない」という危機感を持って、「もうあと10年続けよう!」とか、あんまりそういう風には思わないようにしてるんですよね。面白くなくなったらいつでもやめられる環境にいようって。で、いつやめるにしてもその時に、「やることはやったよね」って思えるような状況で毎回臨んでいきたい。だから、続けなきゃいけないというプレッシャーは無いですよね ただ、まだまだ、遊園地だけじゃなくて、いろんな場所で面白いことをやってみたいとは思っています。もちろんホームグラウンドは劇場ですし、1年に1回は劇場でやっていこうと考えてはいますけど、突拍子もない場所を劇空間として成立させるようなことも、もっともっと続けていきたいですね |
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集団のチカラ | |||
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| ―折角ですので、お互いの事も。原さんから見た桑原さんはどんな主宰? 原:すごく信用できる人、嘘をつかない人ですね。嘘が無いから、桑原が「良い」と言ってくれれば、その方向で進もうって思えます。そういうところで、劇団ではすごく求心的な力を持っていますね。と言っても、上から桑原が全部決めて、私たちがそれに従うっていうことでは無いんです。役者は個人個人が自立して、その横並びの中に桑原もいるという感じ。そうした在り方は桑原自身も意図するところだろうし、劇団員の総意でもあると思います。そういうところで、私たちの横に立ってくれる主宰というのは、すごくありがたいと感じていますね 桑:…いいこと言うねぇ(笑) ―ではお返しに、原さんをはじめ劇団員のことも含めて、主宰・桑原さんから見た現在のKAKUTAは? 桑:私は最初、劇団というのは主宰がしっかりカリスマ性を持って引っ張って進まなきゃいけないと思ってたんですけど、ある時点で限界を感じたんですよ。解散の危機みたいなこともあった中で、やっぱり私一人ではできないなって。それで、「私と一緒に考えて、相談に乗ってくれて、私のことも役者として見ながらやっていけるのであれば一緒にやりましょう」って言って、それで集まってくれたのが今のメンバーなんですね。そこからはメンバーはほとんど変わっていません。だから、ちょっと大きなイベント的公演をやるときも、単純に私が決めて皆が進めるということではなくて、劇団員が自分たちで“企画部”というのを作って行動を起こしてくれます。そういう“集団の力”みたいなものは持てているな、と思いますね。 あと、やっぱり私も役者をやっていきたいんですけど、私を上に見られているとその時点で成立しなくなりますよね。その点でも、原が言ったように、横に一緒にいながら、役者としてぶつかり合いながらやれているんじゃないかなって感じています。 ちなみに原とは《円(えん)演劇研究所》にいたときからの同期なんですよ。で、同期の友人としてスタートしているということもあるので、役者として基本的に信頼を置いているんですけど……実は原って、けっこう突拍子も無いことをやるんですよ(笑)。演出席から思わず「やめて、やめて!」って言っちゃう、みたいなことを。でも逆に、それって自分で何かを持ってきてくれるっていうことですよね。「なんでこんなことするんだろう?」ってことを持ってきてくれるので(笑)、面白い役を振ってみたくなるんですよ。普通では終わらないだろうなってところで、演出してても面白い |
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| ―では、最後に今作『甘い丘』について、楽しみにしている皆さんにメッセージを! 桑:今回は、ベタな言い方になりますけど、とてもたくましいお話にしたいと思っているんです。たくましい女たちの話。そこには傷つきやすい部分があるんですけど、その中で、乗り越えていったり見つけていったりして、再生していく話にしたいと考えているので、観てくれた方にとって、ちょっとした発見につながっていく話になればいいなと思ってます 原:二度目のトラムですけど、最初の時は嬉しくて劇団員がはしゃいじゃって(笑)。それでお祭りみたいに終わっちゃったところがあるので、今回は落ち着いて取り組みたいですね。とにかく、新作は久しぶりだし本公演から時間もあいているんですけど、その間、劇団員はいろんなところに客演に行ってたんです。そのみんなと久しぶりに顔を合わせるので、それぞれがどんな風に変わっているのかが私自身楽しみだし、皆さんにも楽しんでいただければ嬉しいですね。 |
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| 昨年('05)から円形劇場やプラネタリウム、花やしきなど特殊な空間を利用した作品が続いたKAKUTA。実は客席が一方向という公演自体が久しぶりで、「ドキドキしています」と、2人は声を揃えて笑った。 1年ぶりのシアタートラム、2年ぶりの新作、そして初めて共演する魅力的な客演陣。KAKUTAが満を持して贈る新作『甘い丘』――そこできっと出会える、これまでとはちょっと違うKAKUTAの新しい貌(かお)を、是非ともお見逃し無く! |
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