
製作×制作
〜STAGE STOREの発想〜
| 製作者と制作者がコンビを組んで立ち上げたユニット【STAGE STORE(http://www.stage-store.com/)】。 公演のたびに作/演出/役者のすべてを集めるプロデュース・ユニットも珍しくない昨今だが、【STAGE STORE】は一つ、大きな特徴を持っている。それは、舞台を劇場外に設定すること。 彼らはいつも、日常をそのまま切り取るような場所を選び、そこに演劇を放り込む。 カフェ。ダイニング・バー。そして電車の車内。 製作×制作という、“演じる側の常識”から離れた彼らの発想は自由で、なんとも面白い。 7月16日に上演される彼らの第3作目『林家二次会』も、やっぱり舞台は劇場外だ。 今回のCLOSE UPでは、そんな【STAGE STORE】の二人、製作の囃子さんと制作の吉野さんに話を聞いた。 彼らが考える、劇場外で芝居を打つ意味とは――? |
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| 2006/6/28 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 | |
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| 囃子(はやし) 製作:昼は昼で別の顔を持つただの演劇好き。芝居好きが高じて、自身で芝居の製作に携わるため【STAGE STORE】を立ち上げる。 吉野 礼(よしの・れい) 制作:劇団【少年社中】の制作を務めるかたわら、他の多くの舞台にも裏方として携わる制作プロパー。 |
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| 劇場外すべてが芝居小屋 | ![]() 本人顔出しNGのためイメージ写真になります。 |
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| ―過去に居酒屋や都電の車内など、意外な場所を選んでは演劇を作り上げてきた【STAGE
STORE】。まずはお二人の活動の、そもそもの始まりから教えて下さい。 囃子: 最初は“僕と吉野”っていう枠組みじゃなくて、あるイベントで僕がカフェ・バー・居酒屋の三箇所で同時多発的に芝居を上演する(『TRICOLORE』)というのをやったんです。その場に制作で居合わせたのが吉野でした。 だから、僕たちはあの作品を【STAGE STORE】の一回目と言ってますけど、実は後付けなんですよ。ただ結果的にあのとき動いていたのが吉野だったから、実は今と変わらない状況でやっていた。じゃあ、あそこをスタートにしてもいいな、と。 …そのときね、吉野がすごくいい動きをしていたんですよ。だから「また手伝ってよ」みたいな感じで誘って――まあ、半分強引に引き込みました(笑) 吉野: 僕、基本が巻き込まれ型なので(笑)。断らないんですよ、僕。なぜかと言うと――こと制作に関して僕は同時進行型で、常に何本か抱えているんですけど、それらを上手くつなげていきたいってことをいつも考えてるんですね。そうやって、小劇場の世界でつながりを作っていきたい。そのために僕が一番重要だと考えるのは、きっかけなんです。 (他所の)芝居を観に行って飲み会に顔出して、というだけじゃどうしても限界がある。そんなに小さな世界じゃないですからね。だから、つながりを作るきっかけって本当に大切なんです。そのきっかけを囃子は与えてくれる。僕はそれを利用して、みんなにも「これは一つのきっかけだと思う」って伝えていくんです。そうしてつながりが広がっていくことは僕的に大歓迎なんですよ ―囃子さんが主導する形で【STAGE STORE】が始まった。そのコンセプトとして、舞台を劇場外に置いた理由は? 囃子: 一つはイメージの問題ですね。皆さん多分、最初に観たお芝居って、学校で強制的に見せられたものだと思うんですよ。狭い座席に押し込まれて、観たくも無いもの観せられて――そうしてできてしまった芝居に対する固定概念、芝居とはああいうものだというイメージを、まずは取り払いたいっていうのがあるんです。 それと、僕はお芝居は日常の中にあると考えていますから、だったら設定をそこに合わせてしまおう、というのもあります。 あとは――そもそも、劇場って半年前、一年前とかから借りるものらしいですね。でも、僕は「そんな先のことなんて分からない。今やりたいことをやればいいじゃん」っていうのが本音なんです。だから、箱(劇場)を借りるのにどうのっていう話を聞くと、そこじゃなくても別にいいじゃないって思ってしまう。そんな僕にとっては、劇場外すべてが芝居小屋みたいな感じなんですよ ―本格的に【STAGE STORE】として取り組んだのは都電荒川線(『ENDRESS LANE(エンドレスレーン)』)からということですか? 囃子: いや、それもいろいろあって(笑)。まだ【STAGE STORE】ときっちり区切ったユニットではなかったですね。吉野にはお願いして手伝ってもらった形でした。だから、ユニットとしてちゃんと線を引いてやっていこうというスタート地点になるのは、次の『林家二次会』です。 もっとも、ユニットになったと言っても、それは何かを縛る理由にはならない。僕が面白いと思うかどうか、吉野がやりたいと思うかどうかがまずあります。その上で、採算ラインに乗らなければやっていて楽しくないので、「みんなの飲み会代稼ぐために頑張るべ」っていう感じでやるわけです。そうしてやってきたことの結果が、今の僕たちの流れを作ってる |
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![]() 若干写真がぼけていますが、本人顔出しNGのための加工のためです。 ちなみに、左手が囃子氏、右手が吉野氏 |
製作と制作の役割 | ||||||||||||
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| ―さて、お二人は製作者と制作者です。気になるこの両者の違いですけど、【STAGE
STORE】におけるお二人の具体的な役割は? 囃子: 僕は製作――簡単に言うとプロデューサー――なんですけど、別にそんなにおこがましいことを考えているわけじゃないんですよ。吉野とはお互い対等ですし。 実は僕、制作のやり方ってまったく分からないんですね。だからこそ自由に考えられるということもあるんだけど、「ここで僕はやりたい」「こういう人たちを入れたい」「こんなことをやりたい」っていうのをどんどん吉野に投げていくんです。すると吉野は制作としての現実的な意見を返してくれる。二人はまったく立場も違えば、趣味嗜好も基本的に違うので、投げたら返ってくるものが多いんですよね 吉野: 僕は制作として、囃子が提案した企画の現実的な、数字的なことを考えて、例えば「客席が埋らないかも知れない」というような危険性を排除していきます。そうして排除したものを囃子や演出家に提示する。「ここまでくればそんなに危険は無いので、あとは料理の腕次第。面白いものを作って下さい」って言って。それが僕の仕事ですね ―お二人の名刺には、囃子さんは「日常は舞台である」、吉野さんは「舞台は日常である」という言葉が添えられてますね。この意味は? 囃子: さっきも言ったように、僕は「日常はすべてお芝居である」と考えているんです。誰だって朝起きて、玄関を出た瞬間に多分、お芝居を作ってると思うんですよ。僕自身、一旦外に出たら会社員の自分を演じているし、家に帰ればそこでも自分というものを演じているんだと思う。そうやってみんな日常でお芝居をしているからこそ、暮らしが成り立っている。それって面白いと思うんですよ。 だから、常にそれは日常の中に落ちているもので、僕たちの作るお芝居はその日常にぽこっと穴を開けるだけのものなんです。別にめずらしい話をするわけではなくて、みんなが見落としているものを違うところから改めて見たら、こんなに面白いんだよっていう ―その“お芝居の上に成り立つ日常”をデフォルメして、ときどき変わったことをするそうですね 囃子: ええ(笑)。よく役者と居酒屋とかで即興の芝居をするんですよ。いきなり喧嘩を始めたり。これ、周りで見ていた人たちは帰ったら話しますよね。「今日、こんなことがあったよ!」って。その人たちにしてみたらちょっとした非日常がそこにあったわけです。でも、それも日常なんですよね。 そんなときの僕らは、基本やりっぱなしなんですけど(笑)、でも、普通のお芝居だって同じですよね。お話をお客さんに丸投げして、どう感じてもらうかということでは。だから僕らの即興芝居も、お客さん、というか隣のテーブルの人たちが何らかの感情を持って帰ってくれたら「よし!」みたいな(笑) ―【STAGE STORE】の活動もその延長戦上にあります。巻き込むのはもっと大勢の人ですけど。吉野さんの「舞台は日常である」――これはどういう意味ですか? 吉野: それは、そのまんまです。僕は365日のうち、360日は制作の仕事してますからね。回路がそれしかないんですよ(笑) |
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| STAGE STOREの芝居ができるまで | ![]() |
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| ―劇場外で芝居を作る流れを教えて下さい。例えば都電荒川線を舞台にした『ENDRESS
LANE』、あれは発想はどういったところから? 囃子: 某劇団が新幹線でお芝居をやられたんですよね。…もうね、そのお芝居には追いつけないですよね、それくらいの速度で行かれたら(笑)。じゃあ、僕らは一番遅い電車でいこう、って。それで試しに初めて荒川線に乗ってみたら、感動したんですよ。子供たちが乗ってきて、お婆ちゃんが乗ってきて……そこにある生活を垣間見ることができた。もうね、お芝居どうこうよりも、こういうものがあるってことをもっと知ってもらいたくなったんです。その上で、ここでお芝居が観られたら最高だろうなって思って ―そして、企画を吉野さんに振ったわけですね 囃子: 実は、企画はいろいろ、それこそ週一くらいで送ってるんですよ 吉野: もう、いくつも溜まってます(笑) 囃子: 実現の可能性が0%のものから80%くらいというものまで、何でも吉野にぶつけていく。その中で、何か一個引っかかるかも知れない。僕が20%と思ったものが、吉野の中では50%かも知れない。だからいろんなボールを用意してぶつけるんです。…「単なる駄洒落じゃん!」っていう企画も盛りだくさんなんですけどね(笑) ―吉野さんにとっては、まず、「これは本当にできるのか?」という企画を送られることから始まるわけですね 吉野: でも、「本当にできるのか?」なんてことは考えないんですよ。とにかく、どこに問い合わせればいいのかを調べることから始めるのが基本です。で、問い合わせるんですけど、二ヶ月くらいたらい回しにされたりして(笑)。 もちろん、最初から問い合わせをしないものもありますけどね。予算があまりにかかるものは避けるので、そこでまず取捨選択はします ―そうして採算性を含めた実現可能性を吉野さんが検討して、いざ実現となったら、役者や演出家、作家はどちらが集めてくる? 囃子: それは二人で。お互いに「いいな」と思う役者さんたちや作/演さんを誘います。僕は芝居を観に行って面白いと思ったら、とにかく声をかけるんですよ。そうして、「この劇団はもっと大きくなるだろう」「この人はこれから“来る”だろう」という人たちに【STAGE STORE】にできるだけ参加してもらう。出来た芝居をいろんな人たちに観てもらったときに、ショウ・ケースのようになれば尚更いいなって思ってますから |
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日常に舞台を持ち出す意味 | ||||||||||||
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| ―そうして出来上がった芝居を劇場外でやる。劇場外で見せることの意義をどう捉えていますか? 囃子: 演劇を観たことの無い人が、より簡単に観られる方法がそれ――日常の中にあること――なんだろうなって思うんですよ。 「今週末、何する?」っていう選択肢の中に、お芝居はもっと入ってもいいと思う。だから、「今度ここのカフェでお芝居やるらしいけど、覗いてみる」みたいな感じで、僕らが気軽な入り口になれればいいなって考えてて。それを観て、お芝居を観るようになるかどうかはお客さんのジャッジですけど、そのための入り口として僕たちが一役買えれば――そう思ってやっているところはありますね 吉野: 制作的なことを言えば、実はどこでやってもそんなに変わらないんですよ。でも、役者や作/演の方にとっては、劇場外だと制約ができる。「これしかないからこれでやって下さい」みたいな。それって、ある意味お手軽なんですよ。もちろん場所が決まるまでは大変ですけど、決まってしまえばむしろ役者も作/演も楽だと思う。だから本来なら劇場外の公演がそこかしこで起きててもおかしくない。特にまだ小さい劇団がわざわざ小屋をとってやるよりも、新宿や渋谷のカフェとか、簡単に立ち入れる場所でやった方がいい場合も多いと思うんです。じゃあ、なぜみんなそれをやらないかというと、単純に“劇場外でやる”という前提が無いからじゃないでしょうか 囃子: だから、僕たちが劇場外でやることで、みんなの目がそこに行けばいいなっていうこともあるんです。もちろん既に、ちゃんとした劇団で劇場外でも芝居をやっているところはいくつもあります。で、そうした芝居を観ると、やっぱり面白いんですよね。だから、一概に「みんな外でやるべきだ」なんてことを言う気はありませんけど、もっともっとそこにある可能性にみんなが目を向けたら面白いのになって思います |
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| 新たな仕掛け STAGE 3 『林家二次会』 |
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| ―さて、【STAGE STORE】の本格的なスタート地点となる次回作の『林家二次会』ですけど、今度の舞台は? 吉野: 西新宿の高層ビル街、新宿三井ビルの地下一階にあるレストランです。地下と言っても、右を見ても左を見てもガラス張りの、外が見えるお店です ―タイトルが非常にダイレクトですけど、これはどんなお芝居になるのでしょう? 囃子: 設定は、結婚式の二次会の会場。そこで起こる日常、というものなんです。 今まで僕が参加してきた二次会って、どれも一緒だなって思うんですよ。インパクトもないし、あんまり印象にも残っていない。だから今回、本当に友だちに話したくなるような二次会をやりたいって思ったんです。その切り口がお芝居でした、という風に出来ればいいな、と。 日常でお芝居を見せる――覗き見をしているような何かがそこではお見せできるんじゃないかと思ってます。だから、友だちの二次会に参加するような気分で来てもらえたら楽しんでもらえると思いますよ ―最後に、今作の見所を 吉野: 結婚式芝居って、それこそたくさんあると思うんです。でも今回は場所が場所というか、劇場じゃないだけに何が起きても、誰がどんな登場の仕方しても面白くなると思います。 とにかく、誰が役者で誰が観客か分からない。そんなお芝居を楽しんで頂きたいですね 囃子: そして、これはあくまでも日常の中で起こることです。そうではあるけれども、普段なかなか目の行かないところを見てもらえる――それが見所ですね |
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| 製作と制作。両者の違いを囃子さんは“船長”と“航海士”に喩えた。この二人が操る船は“演劇の常識”を抜け出して、新たな海図を作り上げるのかもしれない。その航海が、やがてどんな地平を発見するのか――見晴るかすその先に、興味は尽きない。 彼らの仕掛ける“芝居で切り取る日常”その3、『林家二次会』が【STAGE STORE】の店頭に並ぶ7月16日・吉日を、まずはお見逃し無く! |
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