
戯曲のチカラ、再発見!
王子トリビュート001 畑澤聖悟
『俺の屍を越えていけ』
――演出/黒澤世莉インタビュー
| 弘前劇場の2本柱として活躍し、数々の名作を残した畑澤聖悟。2005年に同劇団を退団してからもプロデュース・ユニット【渡辺源四郎商店】の“店主”として、青森を拠点に活動を続けている。 そんな畑澤の作品を三本連続で上演する企画が《王子小劇場トリビュート001 畑澤聖悟》だ。 王子小劇場がプロデュースするこの企画について、同劇場職員で、今回『俺の屍を越えていけ』を演出する演出家でもある黒澤世莉さんに話を聞いた。 *畑澤聖悟(はたさわせいご/劇作家) 1964年生まれ。 「劇団北の会」「劇団漫金堂」「シアター・ル・フォコンブル」「弘前劇場」を経て、2005年、演劇プロデュースユニット「渡辺源四郎商店」を設立。ラジオドラマの脚本家、自身が勤める高校演劇部の顧問という顔も持つ。 |
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| 2006/10/4 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 | |
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| *劇場フリーペーパー「カンフェティ」12月号に関連記事・掲載中です。 | |
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| 黒澤世莉 東京都出身。時間堂主宰。幼い頃より演劇に親しむ。スタニスラフスキーとサンフォードマイズナーを学ぶ。2002年12月、オーストラリアより帰国。作家、演出家として活動中。 |
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| 企画に込めた 劇場としての思い |
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| ―今回の『王子トリビュート001 畑澤聖悟』、その成り立ちから簡単に教えて下さい 僕も含めて、王子小劇場にはもともと畑澤さんの作品がすごく好きな職員がいて、「畑澤さんの芝居を呼べたら面白いよね」って話は前からしていたんです。それで今回、お正月だったら小屋(王子小劇場)を使う人がいないから、そこなら招待公演で呼べるかもしれないと思って畑澤さんに話したら「いいよ」って言って下さった。そこでまず、畑澤さんの公演が来年の1月に決まりました。で、幸い年末も小屋は空いている。だったら、せっかくだから劇作家に焦点を当てた企画演劇祭にしてしまおう、ということになったんです。 劇作家に焦点を当てたかったのは――これはいま、王子小劇場の基本的な考え方にもなっているんですけど――演劇ってやっぱり、何よりもまず戯曲が大事だと思うんです。もちろん俳優も演出もすごく重要ですけど、まず戯曲が面白くないとどうにもならない。だから、もっと戯曲を、劇作家を大事にしなきゃいけないという思いがあって。つまらない新作をやるくらいなら、面白い再演、面白い既成の戯曲をやる――そういう選択肢が演劇にはあるんだってことを、劇場側からもメッセージとして発信したかったんです。それで、王子トリビュートという企画が誕生しました。 だから、この企画はまず畑澤さんありきで始まったわけですけど、今後も第二回、第三回と、継続してやっていければいいなって思っています ―今回は具体的にどんな形の演劇祭になるのでしょう? 今回は最終的に、三団体でやろうという話になりました。まず、畑澤さん自身のユニット【渡辺源四郎商店】の新作。それと、僕が『俺の屍を越えていけ』を演出させてもらうもの。あと一つが【いるかHotel】です。実は王子小劇場の玉山が、畑澤さんとお会いした時に「いるかHotelがやった『月と牛の耳』がすごく面白かった」 というお話が出て、「ぜひそちらと併せてやったらどうか」というご提案を頂いたんです。【いるかHotel】というのは【遊気舎】の谷省吾さんの劇団。さっそく谷さんに話を持っていったらこちらもOKということで、来てもらえることになりました。 【渡辺源四郎商店】は青森、【いるかHotel】は大阪の劇団。もちろん知っている人はちゃんと知っているけれど、やっぱり東京での知名度はまだ高いとは言えないでしょう。だから、王子小劇場がプロデュースして人の目を惹ける企画をやることで、東京での知名度を高め、こちらでの動員増にも役立つことができたら――そんな劇場としての思いも今回はあるんです。畑澤さんの戯曲が面白いのは、絶対に間違い無いですからね。…まぁ、畑澤さんの本を使って、自分と同世代の魅力的な俳優を集めて芝居をつくってみたいという、僕の欲望の結果でもあるんですけど(笑) |
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面白い戯曲を 魅力的な若手俳優の手で |
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| ―畑澤聖語さんの戯曲の魅力は? 戯曲構造につきると思います。無駄なセリフがほとんどなくて、しっかりとした伏線があって、笑えるところと泣けるところが必ず内包されている。これって稀有なことじゃないかと思うんですよ。 それと、演劇の優れているところの一つとして、1シチュエーションのものを見せるときに、映像と比べてすごく見せやすいというのがありますよね。もちろん場面がいっぱい変わる演劇もそれはそれで面白いですけど、僕は1シチュエーション、2シチュエーションのものが演劇には向いているんじゃないかと思うんですよ。で、畑澤さんの本はほとんどが1幕ものなんですね。そこがまたすばらしいと思うし、共感もします。 あと…どうでもいいギャグが楽しいです(笑) ―その畑澤作品の中でも『俺の屍を越えていけ』を選んだ理由は? まず、キャスティングのことを考えたっていうのがあります。誰と一緒にやりたいかを考えたときに、今回は同じ世代のいい役者さんたちを、片端から集めてやってみたいと思ったんですね。この作品は戯曲として面白いのはもちろんですけど、登場するのが若い男女3人ずつなんですよ。その点で僕の意図に合っていたというのがあります。 でも、若い男女3人ずつの芝居ということはつまり、大抵の劇団で無理なく上演できる戯曲でもある、ということですよね。その点でもこの戯曲はもっと世に知られていいはずだって、そんな思いも一方にあって、それでこの作品を選びました。 ―企画の趣旨に沿った選択でもあったわけですね そうです。それに、この脚本なら絶対いいキャストを集められると思ったんですよね。このプロデュース公演が決まった時期も大きいし。何せこの時期(年末)なら、絶対好きな役者さんを集められる(笑)。普段はみんな、忙しい俳優さんたちなんで ―それでは最後に、今回『俺の屍を越えていけ』を演出するにあたっての抱負を 「何が良い演出か?」という話をすれば、僕は演出なんてあるんだか無いんだか分からないような、そんな演出がいい演出だと思うんですよ。「演出が良かった」とも「演出が悪かった」とも言われないようなお芝居、単純に「面白かった!」とか「どの役者さんが良かった」みたいなこと言ってもらえるようなお芝居ができればいいな、と。 とにかく今回、面白い脚本と魅力的な出演者は揃いましたから、あとはちゃんとその魅力を引き出すことができれば、自然と面白いものができると思っています。だから、是非とも多くの方に観に来て頂きたいですね |
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| もっと既成の戯曲を大事に――。 “もの言う劇場”として独自の歩みを続ける王子小劇場からの、新たなメッセージ――王子トリビュートは、間もなく幕を開ける。 コアな演劇ファンがこぞって賞賛する畑澤聖悟作品をまとめて体験できるこのチャンス、是非ともお見逃し無く! なお、インタビューには出演者も同席してくれたので、それぞれの今作へ向けた抱負も、黒澤世莉さんの人物解説付きでどうぞ! (原田紀行さんは都合で欠席です) |
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| 葛木英 【メタリック農家】っていう、コテコテっとした演劇やる劇団の主宰 /作 / 演出をやってます。俳優としても【ブラジル】とかに出演している、魅力的で可愛らしい女優さんです。 「1シチュエーションの舞台はあんまり経験がないんですけど、今回、フラットな上手さを持った役者さんが集まっているので面白そう。『個性! 個性!』みたいな芝居に出ることが多い私としては、是非ともこのお芝居で上手くなりたいな、と(笑)」 |
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黒岩三圭 「稽古に入る前の準備段階がまず、普段とは違うんですよ。いつもは出演が決まってから台本が出来ますから。今回は最初から台本があるので、しっかり読んで、どんな立ち方をするか決めて、という準備から楽しみたいな、と。あと、アキラ(葛木英)以外の皆さんとは初めて共演しますから、それも楽しみですね」 |
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| こいけけいこ 「……えーと、はい、頑張ります!」 |
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玉置玲央 「自分、若造なので、とにかくできることを精一杯やって…やらしいこと言うと、得られるものは全部得て帰りたいって思ってます。あ、求められればビキニにもなります!」 |
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| 森下亮 「お話を頂いた時に脚本がすでにあって読める、っていうのがかなり嬉しかったですね。普段はダイナミックな芝居をやっているので、今回のようなしっかりとした会話劇は本当に久しぶり。だから今回は試されるというか、より追い込んだところで自分が見られると思うので、それが楽しみです」 |
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| さて、このメンバーに【reset-N】を長く引っ張ってきた俳優・原田紀行さんを加えた6人が、どんな舞台を作り上げてくれるのか――是非ともお楽しみに。 最後に、こいけけいこさんのコメントだけあまりに短いので、ひととなりを示すこんなやりとりをフォローで。おまけです。 [おまけ] こいけ「……あのー、森下さんは、“イチゴ牛乳を盗む人”の役ですか?」 森下 「えっ!? 」 黒澤 「…“イチゴ牛乳を盗む人”というキャラはこの作品には登場しない!(笑)」 |
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