こんな上田を待っていた!
新作『上田一家物語』で見せる、劇団上田の新しい顔                 
                  ――劇団上田・座長 / 江戸川卍丸インタビュー

劇団上田は不思議な集団である。ある舞台では彼らのトレードマークとも言える白Yシャツ、黒スパッツ、サングラス――通称“上田衣裳”で派手なパトラクション(パフォーマンス+アトラクション)を繰り広げたかと思えば、次の舞台では上田衣裳を脱ぎ捨て、ストレートプレイで文字通りの直球勝負を見せてくれたりもする。だがこれまで、彼らのパトラクションとストレートプレイは決して交わること無く、それぞれが独立したラインを保ってきた。そんな彼らの二つの顔が、この冬、ついに出会う。新作『上田一家物語』で見せる新しい上田のかたち、それはズバリ、“上田衣裳”と“演劇”の融合だ。

ファンが待ち望んだ“その先の上田”――今年の劇団上田を締めくくるこの公演を前にして、座長・江戸川卍丸さんに話を聞いた。


2006/10/4 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

*劇場フリーペーパー「カンフェティ」12月号に関連記事・掲載中です。

劇団上田

2000年、劇作家 / 演出家の地獄谷三番地(じごくだに・さんばんち)、座長・江戸川卍丸(えどがわ・まんじまる)を中心に結集。人体表現は極上のエンターテイメントであるという考えのもと、濃密且つ実験的なエンターテイメント空間を提供することを目指す。
「濃密なエンターテイメント空間」としての演劇公演、「実験的極上人体表現」としてのパフォーマンスアトラクション(パトラクション)が活動の中心。


江戸川卍丸(えどがわ・まんじまる)

劇団上田の座長。パトラクションの構成、振り付けも担当しており、宣伝用チラシ、Webデザインも手掛ける。劇団外でも身体表現の可能性を求め、コンテンポラリー・ダンス等の分野でも活躍。


もう一歩、お客さんの心に
      近づけるかもしれない

―今作『上田一家物語』は、昨年一度上演された作品が元になっているそうですね

 ええ、去年1ステージだけやった幻の作品。だから前回の台本はあるんですけど、もちろん今回、全部書き直して。実はその前回のときに、初めて上田衣裳でちゃんとした演劇をやったんです。と言っても、全員サングラスってわけじゃないんですけど。“上田一家の人々”だけが上田衣裳で、それ以外の役は普通のポロシャツだったりとか。それは今回も一緒ですね

―これまでパトラクションとストレートプレイを二本柱にしてきた劇団上田。“上田衣裳でやる演劇”というのは、劇団の中でどういう位置づけになるのでしょう?

 正直、まだよく分からないんです。ただ、二刀流でやってきたものを一つにするつもりは全くなくて。つまり、これまで“上田衣裳”と“演劇”は別物として、しっかり分けていた。その2つを今回融合させるからといって、お芝居の中にパフォーマンスを入れるつもりは全然ないんですよ。ただ、何か一つ、劇団上田にしかできない作品を明確に打ち出したかった。それが一番分かりやすいのがこれかなって思ったんです。
 だから、一つのかたちとして今回これを提示するだけで、これから先、こればっかりになるわけでもないんですよ。いままで通りのパフォーマンスもストレートプレイも続けていきます。特にパフォーマンスについては、他の人たちには絶対できないと思っていますからね。もちろん、パフォーマンスをやるところはあると思うんですけど、最近の劇団上田のものは、もうなんか、舞踏とかコンテンポラリーみたいな、ダンスの公演に近い感じになってきてますし(笑)


―二本柱以外にも「上田にしかできない作品を打ち出したかった」――その欲求をこのタイミングでかたちにしようとしたわけは?

 なんか、「負けねぇ!」って気持ちが一番なんです。実は今年、これで4本目の公演なんですよ。普通の劇団は大体2本でしょう。それを4本、しかも既に終わった3本の作風が全部違う。一人芝居あり、パトラクションあり。だから、「どうだ!」って気持ちもあって(笑)。そんな今年の締めくくりに相応しいものをというわけで、じゃあやってみようか、と

―4本って大変ですよね

 でも僕、のらりくらりやるのが嫌いなので。だからもう、毎回「これで死ねばいい!」ってくらいの感じで、ええ。結果を出すまで走る、体力が尽きたら終わり!みたいな(笑)

―そして辿り着いた上田衣裳と演劇の融合。これが“答え”のすべてでは無いにせよ、新しい劇団上田が見られそうですね

 見てもらえたらいいなと思いますね。…この上田衣裳の格好って、多分、お芝居の中に出てきたら……もう人間じゃないですよね(笑)。お芝居は人間の生きている様を見せる。でもこれを着てしまったらフィルターというか、異空間のものを面白がるっていう感覚が生まれる。そういう、面白いことをしそうな格好をした人が普通に真面目なことしたら、きっともう一歩、お客さんの心に近づけるんじゃないかなって思いもあったんですよ。もちろん、すごく細かくリアルに作っていかないと、ただの茶番になってしまうとも思っているんですけど

―そんな劇団上田の新しい顔を、きっとファンは心待ちにしていたと思います

 そうですか? だと嬉しいですね。この『上田一家物語』も、多分「〜編」みたいな感じで続いていくと思いますので

芝居の中で
  遠慮の無いぶつかり合いを

―さて、その『上田一家物語』。どんな作品になるのでしょう?

 家族の話です。昨今、家族の問題っていろいろ事件とか、出てきてますよね。そこをちょっと社会派的に……って本当は全然、社会派じゃないんですけど(笑)。内容はなんでもない、本当に普通の家族の話です。ただ、それを上田衣裳でやることで、もしかしたら家族についても別の見方が出来るんじゃないか――そんな期待はしています。
 もっとも、かたちは違っても僕たちが大事にしているもの、見せたいものは多分一緒なんだとも思うんですよ。パフォーマンスであろうと演劇であろうと、僕らは人間を見せたい。人間がちゃんと強く、一歩一歩踏んで生きていく、っていう覚悟を伝えたいのは毎回のことで、それは今作でも変わりませんから。
 …実は僕、最近スタジオ・ジブリがすごく好きなんですよ。「ああ、分かる〜!」みたいな感じで(笑)。だからってわけじゃないんですけど、とにかく今作はハートウォーミングな作品にしたいですね


―なぜ、家族の話をやりたいと?

 家族って、やっぱり他人とは違いますよね。それぞれ色んな形があって、でも切っても切れない関係で、異様な距離感があったり。そんな中での遠慮のない魂のぶつかり合いも作品の中でやれたら面白いかなって思ったんです。
 ちゃんとお芝居としてぶつかり合う。それって修行みたいなものなんですけど…なんか僕、ぶつかり合いたい(笑)。だから、今回は“親子編”なんですけど、“兄弟編”もすごくやってみたいんですよね。兄弟同士のぶつかり合いって面白そう


―では、今作を楽しみにしている皆さんに、メッセージを

 「これが上田のすべてです」とは言いませんけど、いま僕たちにできる最高の作品に、きっとなると思ってます。実はこの作品、昨年やったときは1ステージだけでちょっとしかお客さん入れてないのに、再演希望が一番多いんですよ。だから多分、やりたいことの方向として間違ってはいないとも思いますし。
 あと、劇団上田を観たことの無い人にも、この機会にとりあえず1回、見て頂きたいですね。
 ……上田って、本当にお客さんが入らないんですよ(笑)。面白くないのかなぁ…(爆笑)。
 あ、いやでも、これは間違いないですから! とにかく、小細工なしでぶつかる劇団上田の集大成ですから、是非観てやって下さい!!


 劇団上田のパトラクションを見ながら、こんなことを思ったことがある。これから彼らはどこに向かうのだろう、と。彼らがオンリーワンであることは分かっている。だからこそ、“その先”が見てみたい、と。
 答えの一つは、案外と早くやってきた。それが『上田一家物語』だ。
 座長みずからが集大成と語るこの作品で、劇団上田が見せる新しい顔とは?――今から楽しみでしかたがない。


『上田一家物語』
2006年12月6日(水)〜12月10日(日)
サンモールスタジオ
⇒詳細情報はこちら


作・演出 
地獄谷三番地 

出演
江戸川卍丸 
荻原もみぢ 
春日井一平 
地獄谷三番地 
花小路男D 
細身慎之介
ザンヨウコ(危婦人)
石黒圭一郎(劇団コーヒー牛乳)
加藤敦(ホチキス)

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