【黒色綺譚カナリア派】主宰赤澤ムックインタビュー
〜ぬるく生きるな〜

 わずか五回目の公演でザムザ阿佐ヶ谷との提携公演(第2弾)、テアトルプラトーでの放送決定と、着実に人気劇団へと歩みを進める【黒色綺譚カナリア派】。

 自身もモデル・役者として活躍する主宰の赤澤ムック氏に新作『眼だらめ』、そして【黒色綺譚カナリア派】について語ってもらった。
2006/1/15 文責・インタビュアー:浅井貴仁 撮影(チラシ画像をのぞく)・編集:鏡田伸幸

赤澤ムック
北海道出身

 03’「黒色綺譚カナリア派」を創立。作・演出家としての活動の一方で役者としても活動しており、毛皮族「エロを乞う人」(パルテノン多摩演劇フェスティバル2003参加作品)など客演もしている。

 最近では、映画 「孔-KUJAKU-雀 女ハスラー捜査官」(来春公開予定)、 スパイ道2<スパイ求む〜憧れのスパイ・不二子> に主演し、映画の世界でも注目を浴びている。また、雑誌にも取り上げられたり、イベントへの参加など、様々なジャンルとのコラボレートも精力的に行っている。


美学を書きにくいから、
現代は描かない

――【黒色綺譚カナリア派】というと、明治〜昭和初期を思わせる時代設定が特徴的ですが、なぜ現代ではない時代が舞台になっているのですか?

 美学が書きやすいから、ですね。

 その美学とは人の生き様、男らしさとか女らしさを潔く貫くことです。前作(「野悶氾〜泣いた雀は紅ダルマ〜」)では、逆説的に「貫いているけど、潔よくない人たち」ばかりを描きましたが、潔さを表現する時に、例えば携帯電話があると描きにくいんです。

 携帯を持っていると、5分遅れても「あ、遅刻するね」とメールで済んでしまう。「あと5分早く行っていれば」という後悔や、「待っててくれたんだ」という喜びも、相手の家に電話する時の緊張感も何もなくなってしまうんです。恋愛でも仕事でもそういう感覚がなくなるのは、もったいない気がします。


――確かに、現代ではそのような感覚がなくなっているような気がします。携帯もみんなが持っているから、自分も持つという感じですね。

 「携帯を持っていたら捕まる」くらいの世の中になればいいんですよ。1人の時間があったほうが良いじゃないですか。それに、お互い管理しあうようなこともなくなる。だから「みんな携帯を壊せばいいのに」と思いますね。

――ちなみに赤澤さんは携帯は持っていないんですか?

 持ってます(笑)。ないと不便なので。でも、私の場合は家デンです。持たないで、出てしまうので。

 携帯以外にも例えば「処女のまま結婚する」という考え方が昔はありましたが、これもある意味「潔さを貫く」ことですよね。理想かもしれませんが、その1回の出会いにすべてをかけられる。そういう命がけみたいなことが現代ではなかなか得られないですよね。二度と会えないかもしれないから、雨の中をずっと待っているとか。

 だから、そういう緊張感とか潔さのない現代では書けないです。今、潔く生きている人は、とても熱く生きているのに、たいてい損しているかアホみていますよね。熱くて成功している人って、なかなかいない。「昔は熱かったのに」という人はいますが。熱くて成功してもいいのに……。

 つまり、「ぬるく生きるな」ということを言いたいんです。

 中途半端なことが多いじゃないですか。仕事でも恋愛でも。そういうのが嫌ですね。私は背中を見せていきたいですね。背中で語れる人でありたい。


――作品を観て感じて欲しい?

 そうですね。作品を通して赤澤ムックを見てもらいたいのかもしれない。いろいろな角度で感じとってもらえればいいと思います。

唐組入団、黒色綺譚旗揚げ、
そしてザムザとの提携

――モデルや役者としても活躍されていますが、劇団とそれ以外の仕事は意識が違いますか?

 劇団とそれ以外の仕事は別ですね。意識が違います。

 役者やモデルは「仕事」という感じがします。もちろん「仕事」はきちんとやらなければいけないと思っています。でも、劇団は本当に恥ずかしいくらい自分の本質で、「懺悔」という感じです。都合のいい話ですが、いろいろな人に手伝ってもらって、自分ができなかった「潔さ」とかを表現して、懺悔して、キレイなものに昇華している気がします。

 反対に観客に対しては懺悔というより、煽動的なものにしたいですね。観た人を何かに駆り立てるような。うちの劇団は見ている人が泣いたり、感動するような作品ではないと思います。
 
 誰かと観に行って、「じゃあね」と別れて家に帰ったあたりで、作品を思い出して「あっ」と何かに気づく。そうやって、時間差で作品を自分に投影して欲しいですね。


――刺激的なシーンが多いのも、扇動的ですよね。

 刺激的な内容なのは「なぜそうしたのだろう」と観客に考えてもらいたいから。例えば誰かが殺されたら「なぜ殺されたのだろうか」と考えますよね。
 
 殺されるシーンも、潔さが大事だと思います。「中途半端なことをしているヤツは死ねばいい」みたいな(笑)。私はそう思います。


――そもそも、高校の頃から、演劇部でアングラに近いことをされていたんですよね。その後、短大を出て【唐組】に入るわけですが、きっかけは?

 【唐組】はビデオでしかみたことがなかったんですが、『電子城U』という作品を観て、一目惚れして入りました。物語どうこうより、アングラ劇というのは、新劇よりその人のバックボーンが見えやすいと思います。人生経験が豊富な人はそう見えるし、薄っぺらく見える人は「うすい人生歩んでいるんだなあ」と気づいたり。【唐組】にいた人は熱い人が多かったですね。

――その後、旗揚げをするわけですが、その理由は?

 【唐組】で役者として出ていたんですけど、舞台から客席を観るより、客席や舞台裏から舞台を観る方が気持ち良いと改めて気づいたんです。自分がライトを浴びるより、人にライトが当たっているほうが好きなんです。それで旗揚げをしました。

――旗揚げ後、2作目で劇団名に【カナリア派】がつきますね。

 実はもう1人、作・演出がいて、【黒色綺譚】は2人のユニット名みたいな感じでした。でも、その人が53歳の鍛冶屋で、なかなか公演が打てなかった。その人が独立したのを機に【黒色綺譚カナリア派】に名称を変えました。

 カナリアというのは思いつきですが、「カナリア会」とか女性の団体に付いていることが多いんですよ。童謡でも、「唄を歌わないカナリアは殺される」というのが、ありましたね。あと、昭和の雰囲気に合うかなと。


――<赤澤ムック>という芸名にも何か由来はありますか?

 <赤>は【紅テント】からとりました。字は違いますが。

 <ムック>は最初「無垢」でした。無垢な子ども。最初にいた鍛冶屋が決めたんですけど、あまりにも気恥ずかしいので変えました。あと高校時代「ガチャピン」と呼ばれていたので(笑)。プライベートがガチャピンで、仕事はムック(笑)。それから性別をなくしたいという思いもありました。この名前のおかげで、たいていおじさんだと思われていましたね。本当はこれからもおじさんのイメージでいきたいくらいです(笑)。

 というのも、女がこういうグロイこと書くのって、すごく底が浅い感じがするんですよ、自分で。「ああ、またもてはやされて書いちゃったのね」という感じで。男尊女卑だと思いますけど。


――前回からザムザ阿佐ヶ谷との提携公演、そして今回テアトルプラトーでの放送が決定していますが、これはどのような経緯で?

 テアトルプラトーは前回の公演のあと、お話をいただきました。ザムザとの公演提携は【月蝕歌劇団】主宰の高取さんが「提携したらどうか」とザムザさんに声をかけてくださいました。その頃は高取さんと面識がなかったのですが、チラシで気に入ってくださったそうです。ちなみに今回のチラシは女性向けにやわらかくしてみました。

――前回のチラシを見たら、人形劇かと思いました。

 結局、人形はでてきませんけどね(笑)。前回は男性の方が多く見に来てくださったんで、今回は女の子受けを狙ってみました。

もっと尖っていきたい

――今作の内容に関してお聞かせください。

 そうですね……。今回は目にまつわる話です(爆笑)。そのままですよね。目だらけでデタラメだから『眼だらめ』です。宗教団体が出てくるんですが、別に宗教が書きたいわけではありません。日本昔話みたいな民俗ものですね。眼にまつわる話で、いろんな目に合ってしまう目医者の話です。……すみません、つまらないダジャレしか浮かばない(笑)。

――昭和の雰囲気に、ザムザという劇場は合いますよね。

 そうですね。以前から「雰囲気が合う」といわれていたんです。逆に、第一回は、わざわざこういうセットを組んでいました。はじめてザムザを見た時「ここなら組まなくてもすむぞ」と思いましたね(笑)。

――今回、映像は?

 今回はないですね。前回はバックボーンとして過去の話が欲しかったんです。舞台上で「10年前」とかやるのが嫌いなんです。若い方が老人の役を演じるのも嫌い。そういう嘘が嫌いなんです。あと、お客さんの目に耐えられる子役がなかなかいないから、子役を舞台に出すのも危険だったので、映像を使いました。

――今後、映像を使う予定はありますか?

 舞台ではないですが、ちょうど今日、4月に上映する作品の打ち合わせがあったんです。5人の監督によるオムニバス映画です。オープニングとエンディングは一緒で、間は好きに作っていいという企画です。中里順子さん主演で、撮影はもう終了しています。

――赤澤さん自身の将来の夢はありますか?

 伊豆に別荘がほしいです。印税生活がしたいです(笑)。……こんなことでもいいですか?

 なんだろう、常に刺激のある役者、可能性の見える役者さんと仕事がしたい。「ああ、この役者にこのセリフを」「この役者にこの衣装を着せたい」と思えるような刺激がどんどん欲しいですね。


――注目している役者さんはいますか?

 いま、注目しているのは【桟敷童子】の板垣桃子さんと、【毛皮族】の町田マリーさん。正反対ですが、芯の強い女優さんたちで面白いと思います。私の書く逆説的な美学に、自分の美学を乗っけられる人たちだと思います。

 劇団以外の仕事はボチボチとやっていきたいです。私は、カナリア派を背負っている意識があるので「何でもやる」というわけにはいかないですね。テレビや映画とかで見て「劇団もやってるんだ?」じゃなくて「ああ、黒色綺譚の人だから出てるんだ」となればいいですね。

 「ぬるく生きるな」「潔く貫く」「背中で語りたい」……。
 
 クール・ビューティーな印象を持つ赤澤氏はとても熱い人だった。

 流行りに流されない、現代を描かないといった徹底した美学から生み出される赤澤氏の舞台は、現代を生きる私たちが忘れてしまった感覚を思い出させてくれるだろう。


『眼だらめ』
2006年2月2日(木)〜2月6日(月)
ザムザ阿佐ヶ谷
⇒詳細情報はこちら

山村のヤブ目医者が雨降りに思い出すのは、
診療なまけで盲目になった女の事。
その湿度に眼の奥が痛むと、村人達は彼の陰口を楽しみ、
彼は彼女の幻影に怯える。
無口な嫁との診療所には誰も来ない。
気の狂った輩が夜な夜な訪れるだけ。
ヤブ目医者が診る度1つずつ消えてゆく奴らの眼球。
輩の中には化け物が紛れているってさ・・・

稽古風景
      
  

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